2010年1月22日金曜日

哄う合戦屋

 実は、年末に図書館に予約してあった。
 新刊だし人気があるようで、なかなか手元まで届かなかった。
 坂の上の雲も先か気になる。
 しかし、これはページ数もあまり多くないし、地元周辺が舞台。
 すんなり読めるかなと…。
 なにせ、図書館に返す期限があるし…。
 イレギュラーだが、こちらを先に読ませてもらおう。
*   *   *
 ときは、戦国乱世まっただ中の中信濃。
 北越を長尾景虎が統一。南は武田晴信が諏訪を切り取っていた。

 保福寺峠(松本市−青木村)。
 青木方面へ帰る、豪族・遠藤吉弘の姫・若菜。
 若菜は、ひばりの巣を観察する巨漢・石堂一徹と出会い、屋敷へ招く。
 石堂一徹の豪勇は、信濃一円に鳴り響いていた。
 が、この男、ただの暴勇ではなく、絵などを解する繊細さを持ち合わす。
 そんな男が何を考えたか、遠藤家に仕官する。

 ある日、近隣の高橋家が当家に夜討ちをかける、という情報を得る。
 頭領である吉弘は、野武士の鎮圧に出かけ留守だ。
 一徹は、落ち着き払って対処しはじめる。
 奇計をもって、高橋を討ち取る。
 さらに、吉弘と合流。
 勢いに乗じて、相手方の城を占領。
 一徹の本領が発揮された、最初の戦だった。

 それからは連戦連勝。
 何かに憑かれたように、所領を拡大していく遠藤家。
 四千石だった領土は、気づけば二万四千石。
 信濃守護の小笠原長時に、比肩するまでになっていた。

 一徹には、その軍師的才能に裏打ちされた野心があった。
 それは、遠藤吉弘を天下人にすること。
「自分に将器はない。しかし軍師として天下を取りたい」
 その孤高の志しも、理解者は姫の若菜だけだった。

 そんななか、松本平に武田が進攻するという情報が。
 小笠原を主とした連合軍で、武田を迎え撃つか。武田に降るか…。
 しかし、一徹の考えはどちらとも違う。
「小笠原以下の豪族を掃討し、武田を迎え撃つ!」
 しかし、到底、常人は上策とは考えない。
 一徹と吉弘の間に、ズレが生じはじめたのもこのころだ。
 吉弘に領土拡大の大望はすでにない。
 一徹と若菜の間の親密さもいぶかって、一徹を疎みはじめていた。
 吉弘は、一徹の策を嫌い、小笠原連合軍に加担することを決める。

 一度は、遠藤家から身を引こうと考えた一徹。
 それを引き止めたのは、若菜の彼への決然とした想いだった。

 はたして一徹は、連合軍のなかで、武田方を迎え撃つ…。
*   *   *
 とにかく読みやすかった。史実を舞台にしているので、登場人物たちが活き活きとしていたと思う。
 しかし、一徹の考えが孤高に過ぎて、イマイチ感情移入しにくいのと、若菜とのプラトニックな関係も解しかねる。まあ、自分が凡人なのだから仕様がないか…。
 それに、石堂一徹と山本勘助がダブるのが気になるなぁ(比べるのはナンセンスかもしれないけど^ ^;)。勘助が、人間臭さから成長して孤高に達していくのに対して、一徹は真逆の成長をしたように感じた。

2010年1月17日日曜日

坂の上の雲(六)

 黒溝台は大激戦。というより地獄。
 司令部は、事実上機能していないに等しい。
 秋山隊は陣地を死守。
 好古の頭に退却の二文字はない。
 司令部は、中央・右翼を左翼へ逐次投入。
 自然、中央部の守りが薄くなる。
 しかし、敵将クロパトキンはミシチェンコを追い落とすため、あえて攻めてこない。
 ロシアの上級士官たちは、皇帝のご機嫌うかがいしか考えていない。
 敵は日本でなく、ロシア国内だった。
 中央突破されていたら、日本は確実に負けていただろうと考えられる。

 バルチック艦隊は、マダガスカルで足止めを喰っている。
 理由はさまざま。
 ひとつは、石炭が潤沢に供給されないこと。
 ひとつは、本国が第三艦隊を増派することを決定。それを待つことに。
 もうひとつは、旅順が陥落したことの様子見でもあった。
 ロジェストウェンスキーは、国内情勢の不安もあって、呼び戻されると考えていたらしい。
 その間、兵たちの士気はみるみる落ちてゆく。

 ロシアは連戦連敗中。
 そのあおりを喰って、国内では不穏な空気。
 にわかに地下活動が活発となる。
 それを後押ししたのが、日本の明石元二郎大佐。
 ようするに、スパイとしてフィンランドへ。
 彼は、スパイのイメージからはほど遠く、ぱっとしなかった。
 しかし、逆にその実直な性格が買われる。
 フィンランド憲法党のカストレン・過激反抗党のシリヤクスと親しくなった。
 そして、時流に乗って地下活動を援助。
 ロシア属国であるフィンランドから、火の手を上げる。
 ロシアは、これに過剰反応した。
 司祭ガポンに率いられた、ただのデモ行進に警備兵たちが発砲。
 数百人が死傷する。
 かの、“血の日曜日(Bloody Sunday)”だ。

 旅順を陥した乃木軍。
 遼陽の本体と合流するため、北へ。
 意地知は閑職に回され、新しい参謀が配属される。
 乃木は運が悪い。
 列車移動中、その新しい参謀が橋から謝って墜落し重体。
 到着地で、更に新しく配属された参謀は、黄疸を発症。
 結局、若い士官・津野田大尉がその後を継ぐ形。

 そのころ、真之ら東郷艦隊は呉を出発し、鎮海湾へ。
 東郷は、黄海会戦の教訓を生かし、執拗なまでに射撃訓練。
 明けても暮れても、浮き島の的を標的を狙い撃ち。
 日本軍は、標的の指示など、攻撃系統を艦橋から統合的に行う。
 この試みは史上初だったらしい。
 ここで面白いのが、将兵たちに敵艦名を覚えさせた方法だ。
 「アレキサンドル三世」を“あきれ三太”。
 「ボロジノ」をぼろ。
 「アリョール」が蟻寄る。
 ほとんどオヤジギャグ。

 その敵艦隊は、まだマダガスカル沖を漂っている。
 約三ヶ月も、打ち捨てられていた。
 自然、士気が衰え、風紀は乱れる。
 港町は歓楽街になり、売春宿が林立。
 しかし、それもようやく敵国へ出港するという形で、終わりを告げる。

 海の決戦が近づくころ、陸の決戦も近づきつつあった。
 奉天会戦。
 日本軍は、松川大佐の献策を実行するべく行動し始める。
 その作戦とは、左翼(西部)に揺動の大軍(乃木軍+秋山支隊)を出す。
 さらに右翼にも(鴨緑江軍)。
 そして、手薄になった中央を突破。というもの。
 そんなにうまくいくんかい!?
 しかし、児玉はクロパトキンの癖を見抜きつつあった。
 このロシア大将は、秀才ではあったが、天賦の才ではなかった。
 ようするに神経質で、日本軍を過大評価しすぎていた。
*   *   *
 好古兄ちゃんは、ロシア国内の政争のおかげて命拾い。
 バルチック艦隊は、実は、史上初の大冒険をやってのけた。ただ、彼らにそんな感覚は微塵もない。「なんで自分らがこんな目に…」と思ってる。
 それを押さえ込んでる皇帝にも“革命”の影が忍びより、ロシア革命の引き金となった“血の日曜日事件”が起こってしまう。
 いよいよ日露戦争もクライマックスへ。

2010年1月6日水曜日

坂の上の雲(五)

 児玉源太郎は、意を決して旅順へ。
 乃木将軍から統帥権を“借用”し、一気に二〇三高地を攻める。
 強力な28cm榴弾砲。
 それを、無理矢理近場へ持っていき、ガンガン撃ちまくる。
 児玉は乃木軍参謀陣にうとまれながら、一見無茶な作戦を強行。
 しかし、今までの無能な力押しの作戦から、強行ではあるが、理にかなった作戦だった。
 児玉は、乃木軍司令部のように、後ろでぬくぬくとしていなかった。
 前線を視察し、現状を、自分の足で把握するよう努めた。
 結果、あれだけ苦戦した二〇三高地は、二日ぐらいで陥落。
 さらに、28cm榴弾砲で旅順港を狙う。
 当てずっぽうの弾が、敵艦に当たっていく。

 上により、旅順艦隊は壊滅。
 これにより、東郷艦隊は艦隊整備のため、日本へ帰れることに。
 しかし、バルチック艦隊の動向が気になる。
 真之は、一時的に東京に帰京。
 …が、バルチック艦隊で頭がいっぱいだ。
 天井ばかりにらんでいる。

 バルチック艦隊は、そのころスリランカにいる。
 敵将・ロジェストウェンスキーは皇帝に媚び、寵愛を受けていた。
 そして、バルチック艦隊の司令官になる。
 …望んだかどうかは別として。
 器量は小さく、いつも怒鳴ってばかり。
 出発して、バルト海から大西洋を南下。アフリカ喜望峰を経由する。
 ドッガーバンクで、イギリス漁船を日本軍と勘違い。
 メッタ撃ち。
 イギリス激怒。
 日本との同盟もあって、大抗議&大妨害。
 寄る港、寄る港、ことごとく総スカン。

 艦隊がなくなったとはいえ、旅順要塞は落ちてはいない。
 ロシア軍も勇猛に戦った。
 しかし、督戦していた士官が戦死。
 これを機に、敵将の気持ちが萎えはじめる。
 まだ十分に戦えるのに、降伏してしまう。

 遼陽付近は、膠着状態のまま冬営に入る。
 秋山支隊は、左翼・黒溝台付近に展開している。
 さかんに騎兵を使っての諜報活動。
 一部などは、ロシア軍の後ろに回り込んで、鉄橋を爆破したりするという大活躍。
 ロシア側は、グリッペンベルグ大将を派遣。
 コサック大隊が左翼に迫る。
 この地方の寒さは半端でない。
 好古は諜報で、コサックが押し寄せてくることを再三、司令部へ報告する。
 しかし司令部は、こんな寒さでは敵も戦えないと思い込んでいた。
 報告を黙殺。
 好古兄ちゃん大ピンチ!!
*   *   *
 児玉源太郎が盟友・乃木希典を救う。
 乃木将軍は偉人として、いろいろと逸話が多い人物だけれど、そうでもなかったということか。
 児玉が乃木を救ったことはひとつの賭けだった。当時はタブーとされたらしく、児玉源太郎は英雄としては語られていない。
 話には聞いたことがあったけれど、バルチック艦隊って、ほぼ地球一周してきたような大航海をしたのだねぇ。それだけでもすごい。でもそれが、ある意味命取りになったのか。
 さぁ、とうとうコサック騎兵隊が好古を襲う。ほとんど絶望的。兄ちゃんはどうシノいだのか!?