2011年12月31日土曜日

堀部安兵衛(下)

安兵衛は広沢のすすめで堀内源左衛門の道場に通う。
江戸で屈指の道場だ。
変わった修行。
いつの間にか強くなっていく。

中津川祐見は門人の村上兄弟と仲良くしていた。
その伝手で、松平家へ仕官の道が開ける。
村上と安兵衛の叔父である菅野は派閥で敵対関係。

そんななか、村上(弟)と菅野が果たし合いをすることに。
理由は他愛もないことだった。
祐見は村上が有利にことが成るように画策する。
まず、甥である安兵衛をなきものにしようと考える。
そうとは知らない安兵衛。
伊佐子と夫婦の契りを交わし、奉公先へ帰る安兵衛。
幸せの絶頂。
しかし伊佐子は祐見門人のうらみを買っていた。
矢を撃たれ、亡くなってしまう。
そして、そのころ祐見門人に襲われる安兵衛。
しかし、安兵衛は強くなっていた。
返り討ち。
奉公先へ着くと、叔母から菅野を助けてほしいという手紙が。

場所は高田馬場。
安兵衛は、あくまで助太刀という形。
しかし祐見方は思った以上に卑怯だった。
祐見と相まみえ討ち勝つ。
菅野の叔父も村上兄弟を成敗。
しかし老齢の叔父は力尽きる。
メンツを保ちつつ安らかに世を去るのだった。

沙汰が決まるまで一時身を隠す。
そんななか伊佐子が亡くなったことを知る安兵衛。
改めて祐見をうらむ。
そして、落ちてしまったことを感じずにはいられなかった。

安兵衛は一躍時の人に。
天狗になる。
それを広沢らに看破され、恥じらう安兵衛。
頭を冷やすため越後へ。
じつは、安兵衛には腹違いの弟がいたことが判明。
しかし、彼は江戸へ丁稚奉公に出ていた。

お秀は、鳥羽の庇護のもと船宿を経営していた。
その宿に通りがかった安兵衛。
偶然そのことを知り無事を喜ぶ。
弟のことを調べてもらう。
陰ながら会うこともできた。

赤穂藩の堀部弥兵衛という老武士。
安兵衛をいたく気に入り養子に請う。
中山家を再興したい安兵衛。
しかし、その熱意に根負け。
堀部安兵衛となるのだった。

それから数年。
とうとう、あの事件が起こるのだった。
*   *   *
なんという数奇な運命。
昨日の敵は今日の友だったり、その逆だったり。
それにしても、安兵衛はたくさんの人に支えられて生きた。いや、彼が特別な存在だったのか、そもそも人を惹きつける魅力があったのか。確かにかっこよかったようだけど、それだけじゃない男の魅力を感じる。
最後の運命にも、まったく臆することなく立ち向かっていく、その男振!!

2011年12月30日金曜日

堀部安兵衛(上)

ときは徳川の世が盤石となりつつあった。
越後・新発田に中山安兵衛は育つ。
父に強烈な稽古で鍛えられていた。

ある日、父が女中を引き込んでいるのを目撃。
母はすでに亡くなっているが、若い安兵衛にはショックだ。
その女中につらくあたる。

そんな憎い父が、理由も分からないまま切腹。
中山家は取り潰しに。
身寄りのない彼は、亡き母方の祖父に引き取られる。

少しずつ明らかになる真相。
父の部下である福田源八があやしい。
お秀という女中との寝物語でそれを聞かされる。
彼はすでに江戸へ出奔。
安兵衛、それを単身追いかける。
三国峠で邂逅。
真相を聞き出そうとして、危うく殺されかける。
ここで父の特訓がモノを言う。

それを見ていたのは、鍼灸医の中津川祐見。
安兵衛の手並みを賞賛。
福田の後始末を手伝う。
祐見は剣士を目指していた。
意気投合するふたりだった。

あれから五年後。
中津川祐見は窪田道場の食客になっていた。
ゆくゆくは道場の娘と結婚か!?
しかし当の娘がこれを拒否。
天狗になっていたのだ。
祐見は嫌われ者になっていた。
祐見は荒れている。

そんなころ、安兵衛は江戸の姉夫婦の厄介に。
仕官も決まり、その若殿について窪田道場に。
安兵衛、立派になっている。
祐見は懐かしさと嫉妬がごちゃまぜ。
安兵衛を呼び出し、酒をたらふく呑ます。
安兵衛泥酔。
仕官先の屋敷の門限を守れず。
焦った安兵衛、またも出奔する。

父の親友をたよるため、一路小田原を目指していた。
そんな道中、なんとお秀と再会。
お秀は鳥羽又十郎という盗賊頭の女になっていた。
お秀を助けた安兵衛だが、小田原にはたよる人が見つからず。
絶望する安兵衛たちは一路箱根へ。

そこに待ち構えていた鳥羽又十郎。
なぜかそこには祐見も。
祐見と又十郎は顔見知りだった。
最初は見物していた祐見。
相手が安兵衛と知り助太刀。
良心の呵責か。
又十郎の片腕を斬って、またも安兵衛を助けるのだった。

三人は祐見の実家である京都へ。
最初は仲良くやっていたが、そこは男と女。
お秀は安兵衛から祐見に鞍替え。
激怒する安兵衛。
嫉妬の炎に荒れ狂う。

消えたふたりを討ち果たそうと考える安兵衛。
しかし路銀がない。
祖父の形見である備前長船を売ろうとする。
飛び込んだ刀屋にひとり、壮年の男がいた。
刀を売るのを止められ、さらに五両もの大金を貸してもらう。
必ず返すと約束し、祐見たちを追いかける。
借りた相手は、あの大石内蔵助だった。

坂本のあたりで、祐見たちを発見する安兵衛。
しかし、祐見に一日の長がある。
返り討ち。
危ないところを、菅野六郎左衛門という老武士に助けられる。

情けなさのどん底の安兵衛を、優しく諭す菅野。
そして、一緒に江戸へと上ることに。
身柄を林光寺に預けられる。
道山和尚は酒を呑めという。
さて、一週間がぶ飲み。
明けて禁酒。
酒の効能を知り、酒豪へと成長する安兵衛。
不思議と今までの事も、遠い過去に感じられるのだった。

菅野と叔父-甥の契りを交わす。
しかし菅野家を継げというわけではない。
あくまで“野客”という待遇。
安兵衛は、その心づくしに涙する。

しばらくして、安兵衛は何者かに襲われる。
鳥羽の一味のようだ。
そこに居合わせた北島雪山に助けられ交誼を持つ。
そんな彼の家で美青年剣士と出会う。
じつは彼女だった。
伊佐子という。
女だてらにめっぽう強い。

実は彼女、辻斬りを成敗しようとしていた。
それは、なんと中津川祐見の門人だという。
祐見は武者修行の末、自分の道場を持ったのだ。
なつかしい気持ちと、ただならぬ事情。
安兵衛は伊佐子についてゆくことに。
祐見は強くなっていた。
安兵衛は、伊佐子は祐見に勝てないと看破。
間一髪で仲裁に入るのだった。
祐見は、お秀を捨てていた。

しばらくして、祐見が窪田道場に。
果たし状をたたきつける。
祐見の剣は魔性を帯びている。
窪田道場は婿が道場主になっている。
いろいろあって数ヶ月後。
祐見は窪田道場を倒し、名実共に有名になる。

雪山は国元に帰ることに。
伊佐子も同郷だが、安兵衛に惚れていた。
そんな彼女の家に、殺されかけたお秀が。
助けられ匿われる。
職も紹介するが、鳥羽又十郎に連れ去られてしまう。

とうとう、雪山が国へ帰る日が。
見送る面々のなかには、細井広沢という人がいた。
彼は、これからの安兵衛の行く末に大きくかかわることになる。
*   *   *
忠臣蔵は、あまりにも有名だけれど興味がなかったので、人物はあまり知らない。
そのなかにあって、超有名な堀部安兵衛の生涯が、こんなにも波瀾万丈だったとは知らなかった。先がどうなるのか気になって、自分としてはかなりのスピードで読み進めた。
さて、あの高田馬場の決闘。そして、忠臣蔵へと彼の短くぶっとい人生が加速する。

2011年12月29日木曜日

血涙(下)

当然石幻果は悩む。
この精神状態で軍の指揮は無理だ。
そう、耶律休哥は判断した。
石幻果を燕京に帰す。
さすがの耶律休哥も、楊業の息子だったとは思っていなかった。

家族のもとに帰った石幻果。
しかし、容易に記憶の苦悩が癒えるはずもない。
耶律休哥は石幻果に“父”として厳しく対応するのだった。

六郎は石幻果と剣を交えた。
父の剣が刃こぼれした。
それを時間をかけ、丹念に研ぎ直していた。
そして、“四郎”に会うことを決意する。
燕京へ。
彼は待っていた。
しかし、そこに立っていたのは、“四郎”に討ち勝った石幻果がいるだけだった。
分かっていたのかもしれない。
六郎は静かに代州へ帰っていった。

五郎が生きていた。
五代山にこもって、剣を修行していたという。
片腕を失くしていた。
弟たちのために、兄を討つため単身遼へ。

亡霊対亡霊。
どちらが勝っても虚しい戦いだ。
それでも、ふたりは呼び合うように剣を交える。
紙一重。
五郎は砂上に倒れるのだった。

耶律休哥は衰えを感じていた。
次の戦が最後だと思い定めた。
駆け回り、馳せ回る。
楊業の孫・延光の首が飛ぶ。
耶律休哥は、傷ひとつ負わずに、馬とともに去るのだった。

宋帝は病が篤い。
死期を悟った帝。
悲願の燕運十六州攻略を厳命。
六郎以下、楊家軍は先鋒に立つ。

一方、遼。
度重なる戦で、遼の国土は疲弊していた。
石幻果は禁軍を指揮していた。
今度の戦で賭けに出ることを献策。
それは、開封符を落とすというものだった。

遼の作戦にいち早く気づく六郎。
楊家軍 vs 耶律休哥軍。
最後の戦いがはじまった…。
*   *   *
耶律休哥の去り方がかっこよすぎ。
最後の盛りあがりはハンパない。
生きるということは、戦うということ。
男たちが去った草原には、ただ風が吹き抜けるだけ…。

さて、水滸伝サーガの序章とも言える楊家将シリーズを読み終えた。
とうとう水滸伝にいどむ。
さらに、楊令伝、岳飛伝と続く。
…うぅ、果てしない。

その前に、日本の年末には欠かせない物語の、あの人物の作品を読んでみたい。

2011年12月2日金曜日

血涙(上)

石幻果。
耶律休哥のもと、メキメキと頭角を現す。
記憶は無い。
耶律休哥からは、自分が宋の将軍だったことを聞いた。
ケイガキという皇帝の姉が、献身的に尽くしてくれる。
なぜか、違和感は感じない。
いつしか、耶律休哥の右腕となっていく。

楊家軍。
六郎と七郎は代州で調練を繰り返していた。
三万もいた軍は数百人に。
宋は信用できない。
何のために戦うのか?
楊家の誇りのためだった。
父・楊業の意志を継ぐ。
ぶつかりあいながらも、軍を立て直してゆく。

会戦。
五分五分。
六郎は「幻」の旗下、四郎の幻と出逢う。
あの太刀さばき。
あの馬の乗りこなし。
死んだはずの四郎としか思えなかった。

石幻果は、ケイガキと夫婦になる。
吸葉剣を佩く。
燕京でつけられていることに気づく。
吸葉剣でそいつを切り捨てる。
その男は、かつての部下だった。
〝楊四郎〟と呼ばれても、何も感じなかった。

二度目の会戦。
六郎と石幻果が直接対決。
六郎は父から受け継いだ吹毛剣を佩いていた。
吹毛剣vs吸葉剣。
激しい衝撃で、石幻果は記憶が蘇る。
*   *   *
石幻果は楊四郎だった。まさか仇である耶律休哥に拾われるとは。
しかし石幻果は、耶律休哥に父以上のものを見る。
六郎と七郎は散り散りになった、楊家軍を再興する。
しかし、宋は信頼していない。
再興を志す精神の源は、父・楊業から受け継いだ〝誇り〟の復活だった。

2011年11月21日月曜日

楊家将(下)

四郎はとくに個性が強い。
ほかの兄弟たちと相容れない。
しかし、それは強い天与の才能でもあった。
長男・延平は、四郎を北平塞へ。

四郎は、北平塞で活躍が目覚ましい。
そんななか、遼軍との小競り合い。
そこで出逢った、少年のような将。
じつは女。
蕭太后の娘・ケイガキだった。
ふたりは戦場にあって魅かれ合う。

宋の遼への侵攻がはじまった。
圧倒的な軍勢の差だ。
しかし、宋の将軍たちの足並みが揃わない。
兵站も切られてしまう。
またもや耶律休哥によって宋軍は崩される。
そんななか、楊業は主力の将軍・蕃仁美を救うべく動く。
そして耶律休哥とぶつかり合う。
耶律休哥は楊業のおそろしさを身をもって味わうのだった。

その後も小競り合いはつづいた。
とうとう宋の帝は親征を決意。
しかし、そのカゲには遼の間諜の暗躍。

楊業はこの作戦が危険なものだと察知していた。
しかし、軍人としての本分をつらぬく。
またも窮地に陥る宋軍。
それを救うのは、やはり楊家軍。
楊家軍vs耶律休哥軍。
追いつめられるた。
と見せかけて、伏兵がいるはずだ。
しかし、あと一歩。
楊業は蕃仁美に裏切られる。

さて、四郎は北平塞の前哨戦で、頭を強く打ち、気絶。
なぜか耶律休哥は殺さず、連れ帰る。
楊家は、文字通り帝を死守。
生き残ったのは六郎と七郎。
*   *   *
読んでて、なんか「銀英伝」を思いだす。
楊業は武人としての本分をまっとうした。
それを、疑問に思ってもいた四郎。
六郎と七郎は類い稀なる騎兵隊を作り上げた。
最後、七郎は宋という国に憤りを抱く。
楊家の棟梁となった六郎は、どう戦っていくのか?
「血涙」につづく。

2011年11月1日火曜日

楊家将(上)

時は宋が中国統一を目前にしていた。
残るは北漢と遼だ。
楊業率いる楊家軍は北漢の軍。
目覚ましい活躍は、北漢の佞臣のせいで帝に疎まれている。

とうとう宋の総攻撃がはじまる。
宋帝・趙光義は楊業を臣従させたい。
というわけで戦をしないでにらみ合う。
ウラで北漢宮廷内に、楊家と宋が結んだように謀略。
楊業はその申し開きもかねて、帝に会いにいく。
しかし、もう帝自体の信頼は失墜していた。
ここまで尽くしてきた虚しさ。
それを感じつつ、とうとう楊業は北漢の旗を焼く。

北漢を滅ぼした宋は、勢いに乗って燕雲十六州へ。
遼は強く、楊家の活躍で辛くも、帝と八王を救われる。

遼の蕭太后は、男であれば英雄たりえた。
負けは、絶対に取り返さなければならない。
宋を撃退したとはいえ、領地は少し浸食された。
総大将の耶律奚低、
蕭太后に、北に追いやられている“白き狼”。
耶律休哥を、密かに呼び寄せるのだった。
*   *   *
両雄とも騎馬隊の調練を厳しく行い、とくに耶律休哥の軽騎兵は赤備え。
大坂の陣の真田の軍と印象がかぶる。
“赤備え”は少数精鋭の象徴のようだ。

楊家の兄弟たちは、それぞれ武に優れ、それぞれ強い個性を持っている。
とくに、四郎と六郎は成長が気になる。
楊家将と耶律休哥の壮絶な戦いが始まる。

2011年10月19日水曜日

小太郎の左腕

林半右衛門は苦い顔をした。
盟主の甥・図書の用兵がまずい。
敵は兎唇の勇者・花房喜兵衛だ。
案の定、戸沢利高を盟主とする味方は敗れる。
重傷を負った半右衛門。
山中で猟師・要蔵の孫・小太郎に助けられる。
要蔵はある理由から小太郎を人から遠ざけていた。
半右衛門は小太郎に、助けられた礼がしたい。
「鉄砲試合に出たい」
それは祖父に固く禁じられていたことだった。
半右衛門は小太郎と約束をする。

数ヶ月後、今年米の穫高は芳しくない。
しかし、豊作を祝うための鉄砲試合は催される。
そこに現れた小太郎は神業を披露する。

戸沢家が寄る翠山城。
児玉家を盟主とする敵に囲まれる。
籠城は長きにわたった。
兵たちは人を食うまでになっていた。
半右衛門は、嘘をついて小太郎をつれだす。
小太郎の神業で、戸沢方は辛くも勝利を収める。
しかし、半右衛門は自分のついた嘘に苦しむ…。
*   *   *
戦国の“漢”だって、ただの人間だ。
しかし、その当時の“魂”というものは、今の時代のそれとは違う。

最後に、小太郎と半右衛門はまったく違う“生き方”の選択をする。
それは“猛々しさ”と“優しさ”の違いでもある。
“手に入れた者”と“失った者”の違いでもあるのだろう。

それにしても、著者の筆圧は見事だ。
「のぼうの城」でもそうだったが、活写がうまい。
映像が見えるようだ。
それに“漢”の描き方も、サッパリとして心地いい。
同年代として、これからも応援してます。

2011年10月17日月曜日

子産(下)

果たして、子国は引退を覚悟し、子駟に意見する。
そこへ反乱の徒が。
子国は勇敢に立ち向かうが、倒される。

首謀者は、以前から子駟に反感を抱いていた。
しかし、そこには黒幕がいた。
七穆の末席にいた子孔だ。

子産は宮廷の変を知ると、素早く行動する。
まず第一に父よりも君主である簡公を助けた。
これにより、子孔の思惑は大きくはずれる。

子産は若干だが、執政の臣の仲間入りをする。
絶妙なバランスで鄭の内外政を取り仕切っていく。
いつしか時代の主権は、君主から大臣たちへ。
そして、とうとう晋と楚の和平が成る。

子産は“礼”というものを確立する。
*   *   *
子産は後進を育てることはできなかった。
それは子産を尊敬した孔子に言えること。
それだけ“礼”といものを伝えるのは、難しいということか…。

子産はすごい人。
だが、反対を押し切って彼を登用した子皮はもっとすごい人だった。
素晴らしいリーダー。
それは適材適所に人材を登用し、その人に絶対的な信用を置ける人。
…と孔子が言ったらしい。

紀元前に“礼”というものが確立されていた。
しかし、それを守り、あるいは実行することが、いかに難しいことか…。

2011年9月30日金曜日

子産(上)

ときは春秋中期。
鄭の国は、北に“晋”。
南に“楚”の大国に挟まれ翻弄されていた。

子産は小さなころから天才。
政治の機微を見通せる目を持っている。
父・子国は優秀な将軍だ。
宰相の子駟に従って采配をふるっていた。
子駟は優秀だった。
しかし、暗君である禧公を暗殺。
そのころから、独裁的になり政治もまずい。

子産は父が心配だ。
「子駟に引退を勧めるべきです」
孝道を曲げて父に意見する。
叱り飛ばす子国。
しかし、子産の意見も尤もだった。
父は冷静に理解していたのだった。
*  *  *
上巻は父・子国が主役。
父と息子の、着かず離れずの関係がとてもいい感じだ。
それにしても、この春秋戦国という時代。
政治の均衡を考えての戦争。
暗殺して亡命。
亡命して復讐。
自分には悪循環に見える。
秦の統一は、まだまだ先の話。

2011年9月19日月曜日

破軍の星

とうとう、北方謙三に着手。
水滸伝サーガに挑む前に、小手調べとして本書を読んでみる。

北畠顕家は、私本太平記を読んで気になっていた人物。
東北から颯爽と上洛し、足利勢を蹴散らした。
そんな若きヒーローはどんな人物だったのか。
*   *   *
時は鎌倉幕府が倒れ、建武の新政がはじまっていた。
そんななか、京から陸奥へ整然と進む軍隊がある。
それを束ねるのは弱冠十六歳、陸奥守 北畠顕家。
そんな、顕家を熱く見守る人びとがいた。
安家一族だ。
その嫡男、秀通とおじの正通。
半ば破門という形で、顕家の旗下に入る。
その行動には、一族の想いが隠されていた。

建武の新政に、武士たちの不満が爆発。
武士たちの棟梁として足利尊氏との声が。
しかし、それは計算しつくされていた。
そんなどさくさのなか、大塔宮が殺される。
憤る顕家。
そんな背景もあり、顕家は上洛を決意。

陸奥を発した数万の軍勢は、駆けに駆ける。
途中、楠木正成と合流。
新田義貞との連合軍で、京を手中にしていた足利勢を追い落とす。
しかし、あと一歩というところで尊氏の首をあげられない。

血筋からして“源氏の棟梁”は新田か足利だ。
しかし新田にその徳はない。
尊氏は茫洋としているが、カリスマ性がある。
天佑も味方していた。
九州に落ちたが、また息を吹き返すだろう。
「足利と手を組むべき」
楠木正成は、帝に奏上するが相手にされず。
足利勢に決死で立ち向かうことになるのだった。

顕家が留守の間に、陸奥は荒れていた。
陸奥へ帰りながら、それをしらみつぶしに転戦する顕家。
途中、正成の弟・正家の援助で、無事、多賀城まで帰還する。
しかし、舌の根も乾かぬうちとはこのこと。
足利尊氏は、九州から上洛の兵を挙げる。

安家一族の長・安家利通。
彼は、秀通の父であり、正道の兄である。
彼は顕家に、一族の夢を託す用意があることを打ち明ける。
顕家に、ふたつの道が示される。

陸奥は反乱が治まらない。
大きくはないが、やはい。
後ろで糸を引くのは、足利一門の斯波家長。
国府を多賀城から霊山に移す。
京は楠木正成が討死。
新田義貞は北陸へ落ち、またもや足利尊氏は京に入る。
後醍醐帝以下は、父・北畠親房と呼応して吉野に。

陸奥には都から綸旨が。
一瞬悩む顕家。
しかし、心はすぐに決していた。
利通との会談で、顕家は心構えを吐露する。

上洛の兵は、新田勢と呼応する形をとりたい。
ゆっくりと南下する顕家たち。
鎌倉での斯波家長との激闘を征す。
しかし、武士たちの不満は武士の棟梁を求めてやまず。
迎え撃つ足利勢は二十万にも。
対する陸奥勢はその十分の一か。
非情な戦いは、顕家を死の淵へ。

気がつけば、二ヵ月が経っていた。
その間に、片腕とたのむ旗下の武将たちは散っていた。

奇跡的に助かる顕家。
この命で何を成すのか。
顕家のとった行動は、奇しくも楠木正成と同じだった。
*   *   *
弱冠十六で陸奥守となった顕家。その凛とした姿が、新しい国を目指したらどうなっていただろうか。…なんてのは、想像の域を出ないけれど、彼に魅かれて集まった男たちの気持ちは、少しだけど何となく分かるような気がする。
血統が今以上にモノを言う時代。なんでそこまで奏上が受け入れられないのか自分には理解できないが、悲しい国の体制はもしかすると、今も続いているのかもしれない。

2011年9月7日水曜日

神様のカルテ

電子書籍で読む機会を得た。
松本が舞台のお話。
今、映画が上映中だ。
*   *   *
場末の総合病院の現状。
美しい信州の情景とは裏腹だ。
それでも患者と向き合う一止。
そんななか大学病院から誘いが…。
*   *   *
作中にも説明はあるけど、明治に書かれたような文章だ。
なんか、現代ものではないような錯覚におちいる。
だから逆に、読者に受け入れられたのかも。
地域医療の現状を描いた作品は多い。
信州は実際、南木佳士氏や鎌田實氏のような方が活躍している。
この著者も、その末席に座っていると言ってもいいのかも。
改めて、信州は地域医療では、それでも恵まれていることを感じた。

あと、夏目漱石の「草枕」はともかく、島崎藤村の「夜明け前」は読んでみようかなと思った。

2011年9月1日木曜日

勝海舟(六)明治新政

参謀の海江田と大村の仲が悪い。
やはり付け焼き刃の薩長。
勝の予想通り、海江田は辞表を出す。
大村は大手を振って彰義隊を討伐。
勝は大村の“武力過多”の考えに警鐘を鳴らす。

そんななか、益満休之介がこの戦いで命を落とす。
流弾に当たり、立ったままの壮絶な死。
これには、さすがの勝も愕然とならずにはいられなかった。

徳川と薩長の調整役として、駆まわる勝。
そんななか、榎本が率いる艦隊が房総沖へ。
房総から北へ。
途中、あの咸臨丸がはぐれ清水へ。
それを見つけた官軍は、その乗組に凄惨な仕打ち。
それを弔ったのは、あの清水の次郎長だった。

徳川家は駿府に移封。
徳川直参は帰農・帰商か、無碌で後を追うか。
勝も駿府へ。
駿府は混沌としている。
そんななかでも、未来を見据える人びと。
藩校や兵学校を沼津に建てる。

新政府に呼び出され、東京に。
函館の調整役にかり出される。
勝は、もうほとほといやになった。
「暇をいただきやんす」

松本良順が生きていた。
笑顔だが目に熱いものがたまっていた。
河井継之助を只見村で看取ったという。
これから必要な、おしい人が死んでゆく…と。
*  *  *
いや〜、長かった。読むのに半年以上かかってしまった。
このあとも勝さんは、いろいろと活躍するけれど、小説は勝が「何もかもいやんなった」ように、このへんで終わっている。
最後、阿部邦之介に熱く語る経済の話は、今にも通じる話だ。

でも、オイラにはちと難しい話だったかなぁ。
登場人物もなかなか追いきれず。
そんななか、吉岡艮太夫さんが、バックストーリーの主役のように出てきたのが印象的だった。

勝さんは、あくまで幕府側にたって、ニッポンの未来を考え続けた。
初志貫徹。
その証拠に、徳川慶喜の子を自分の養子に迎え、勝家を継がせている。

2011年8月22日月曜日

奔る合戦屋

哄う合戦屋の前日譚となる物語。

東北信濃は村上義清が席巻していた。
その配下の石堂一徹は若輩ながらも、功名を轟かせている。
巨漢ながら、それと似合わず知略も優れている。

義清のツルの一声で、一徹は次男ながらも家督を継ぐ。
さらに“朝日”という妻を迎える。
娘の“青葉”も生まれ、順風満帆だ。
郎党にも恵まれている。

そのころ、武田信虎は虎視眈々と佐久地方を狙っていた。
義清も佐久地方の平定に何度も乗り出していた。
しかし、小豪族が乱立しなかなか難しい。

そんななか、名族・海野氏を根絶やしにする動き。
村上・武田・諏訪の同盟軍が成立する。
ここでも一徹の活躍で、村上軍が目覚ましい活躍。
勝利をおさめる。
しかし、義清と一徹のちょっとした溝から、予想しない悲劇が訪れる。
*   *   *
「哄う…」に至った経緯が語られる。
戦国の厳しい現実、世知辛さがにじみ出る。

それにしても、最後があまりに尻切れのような気がするのは気のせいか。
ネタバレになるので詳しくは書かないが、あのふたりはどうなったのか気になる。
まさかまた続きがあるのではないだろうね!?

2011年7月10日日曜日

勝海舟(五)江戸開城

この巻で「幕末の三舟」が登場。
山岡鉄太郎(鉄舟)は、西郷との談判に、勝の名代として江戸を発つ。
奇跡的に助かった益満休之助と一緒にだ。

勝は一途に江戸の民のことを考えていた。
江戸が火の海になれば、一番の被害者は民衆だ。
万が一を考え、昔の仲間たちにも声をかける。
文字通り奔走する。

幕府と薩長の倒幕軍のとの駆け引きは続く。
そんななか、慶喜は静かに水戸へ。

とうとう江戸城に倒幕軍が入城。
沖では榎本釜次郎(武揚)率いる反対派の戦艦たちが。
そこへ現れた勝。
決死の覚悟だ。
しかし、江戸城に火の手は上がらず。
勝は腹を斬らずにすんだのだった。
*  *  *
勝は江戸城受け渡しを平和裡に進めた。
それは並大抵の努力では成し得ない。
それを飄々と、人を食ったようにこの人は…。
クールヘッド・ウォームハートというより、クールヘッド・バーニングハートだ。
それでも、全部が全部まるく治まるわけではない。

2011年4月20日水曜日

勝海舟(四)大政奉還

勝は長州との調整役を成功させる。
しかし、京へ戻るとそれが帳消しのような状態に。
命がけの仕事が報われない。
この間、縁あって新選組の土方が訪ねてきりする。

江戸へ戻った勝。
長男の小鹿がイギリス留学に落選。
勝は私費で、アメリカに小鹿を留学させる。
そんな間に、病弱だった次男の四郎が亡くなる。

勝家にはいろんな人びとが出入りしていた。
新徴組の山口三郎。
かたや薩藩の益満休之介。
よく考えればすごい状態だ。

一橋慶喜が十五代将軍に。
孝明天皇が亡くなり、巷では「ええじゃないか」が流行。
坂本竜馬が立役者となり薩長同盟。
時代は濃縮したように動いている。

勝は軍艦奉行から海軍奉行へ。
諸外国との調整役になったり…。
そんななか土方が訪ねてきた。
土佐の後藤象二郎が中心となって大政奉還を建白したらしい。
佐藤与之助の報告から、その影には龍馬の活躍が。
しかし龍馬は暗殺されてしまう。

とうとう大政奉還が成る。
慶喜の英断に涙する勝。
しかし、薩長は徳川はつぶす気だ。
この機会を逃すはずがない。
慶喜は大坂で一戦交えるかと思われた。
しかし、みんなをだまして、江戸へ帰ってきてしまう。
それを叱る勝。
慶喜は勝に、あとは頼むとしか言わない。

鳥羽伏見の戦いは惨憺たる様相だ。
江戸では毎日のように評定が開かれる。
小栗上野介を頭に主戦論だ。
それを一夜にして慶喜は恭順論にしてしまう。

そんななか勝は陸軍総裁に。
河童が陸にあがるようだと、最初は固辞していた勝。
だが、幕府・薩摩以前に日本の国だ。
まずは蛇のように巻きつくフランスを振り払いたいと考える。
*   *   *
いろんな場面で、勝の考えが試されていく。
考えの違いに松本良順とも険悪に。
しかし、最後は“赤誠”の二文字が浮かび上がる。
勝もまた武士として“初一念”が貫徹されていると感じないではいられない。

2011年3月31日木曜日

忍びの国

織田信長の次男・信雄が、伊賀を攻めたときのお話。
信雄は、北畠具教の養子に入っていた。
その義父を、文字通り“襲って”伊勢を手に入れる。
次は伊賀だ。
父・信長は息子を褒めるでもない。
「伊賀には手を出すな」
父の言葉のウラとは…。

一方、伊賀国には地侍が多数争いあっていた。
下人である忍者たちは、人を人とも思わず殺す。
百地三太夫の配下である無門は強い。
相手の下山平兵衛の弟を殺す。
平兵衛はそこらの伊賀者とは違い“感情”を持っていた。
人を人とも思わな伊賀者を憎み復讐を誓う。
そして、信雄のもとへ。
しかし、すべては“十二家評定衆”によって仕組まれたことだった…。
*   *   *
無門に伊賀国を大切にする気持ちはサラサラない。
しかし、もうひとつの“国”を守ること。
これがいかに大事なことか、最期に知ることになる。

勝海舟(三)長州征伐

世はまさに、幕末動乱期。
驎太郎も幕府の混乱に翻弄されるように、西へ東へ。
宿願だった神戸の海軍操練所も、立ち枯れ状態に。
言い聞かせて、龍馬たちを西へ。
そんななか長州が蜂起。
これを薩摩を中心とした幕府軍が掃討。
蛤御門の変だ。
追い打ちをかけようとする幕府。
だが、薩摩の思惑もあり難航。
そんなとき、徳川家定が亡くなる。
この若き将軍は、驎太郎にとって精神的支柱だった。
落ち込む驎太郎を、幕府は長州との調整役として派遣する。
自暴自棄の驎太郎。
それを諭したのは、良き友でもある奧医師・松本良順だった。
*   *   *
あの強い驎太郎が挫折しかける。
それを救ったのは松本良順。
「幕府のためじゃなく、日本のために赤誠を」
という、驎太郎の座右の銘とも言えることを、改めて示す。

勝海舟(二)咸臨丸渡米

長崎に来て二年がたつ。
永井玄蕃頭が任期を終え、木村図書が後任に。
ペルスライケンたちが母国へ帰る。
変わりにやってきたのが、カッテンデーキ大尉。
日本人をちょっと見下しているようだ。
そこで真剣試合。
サムライスピリッツの凄さを見せる。
この試合で本当に死人が出てしまった。

新しい船がオランダからやってくる。
日本丸と命名。のちの咸臨丸だ。
長崎も三年目になり、遠洋航海演習へ。
当初琉球を目指していたが、薩摩からお呼びがかかる。
なんと島津斉彬自ら甲板に。
こうなることを驎太郎は予感していた。
島津斉彬は賢君だった。
日本の未来を考えている。
咸臨丸は二度ほど薩摩へ回航した。

井伊直弼が大老となる。
開国派がしめつけられはじめた。
長崎伝習所は廃止。
驎太郎は長崎から呼び戻される。
江戸で海軍操練所が開かれ、その頭取に。
勝家は田町から元氷川に引っ越す。

とうとう、遣米使節団の人選が始まった。
驎太郎は艦長に。
乗組員には福沢諭吉の姿も。
驎太郎は出帆前にカゼをこじらせる。
家人の心配をよそに、フェイントで咸臨丸に乗船。
二度と帰れないかもしれない。
それなのに、ちゃんとした別れを嫌った。

出帆は一月で雪がちらついていた。
往路はほとんど晴れない。
大時化が続き、誰もが死んだようだ。
そんな困難な往路。
やっとのことでサンフランシスコに到着。
そこで驎太郎たちを待っていたもの。
それは、めくるめくカルチャーショックだった。
さて、咸臨丸で渡米した偉業を成し遂げた驎太郎たち。
だが帰国しても、それが拍手で迎えられたわけでもなかった。

鬱勃としている驎太郎の前に現れたのは、あの坂本竜馬。
勝塾は、彼の登場でにわかに活気づく。
そして、神戸に海軍操練所の創設が決まるのだが…。
*   *   *
渡米後、いきなり坂本竜馬たちが登場。
昨年の大河ドラマに出てきた面々だ。
驎太郎は、そのなかでも岡田以蔵に目をかけていた。
もう一人、広井磐之助という仇持ちにも。
驎太郎の、死に向き合っている者たちへの慈愛が感じられる。

弁解。
ここ数ヶ月、いろんなことがあったので、ブログ更新がおろそかになってしまった。
東日本大震災に被災された方々には、何といってお見舞いしていいか分からない。
未曾有の大災害だけれど、この本の舞台である幕末以降、戦後、阪神大震災と、不死鳥のように復活してきた日本の底力がためされていると思う。

さて、横道にそれた。
ようするに、本は読み進めているけれど、これからちょっと感想を簡略化します。
すんません。

2011年3月30日水曜日

勝海舟(一)黒船渡来

去年の大河ドラマ「龍馬伝」。
勝海舟が演じていたのは、あの“龍馬オタク”の武田鉄矢さん。
「新選組!」のときの、野田秀樹さんのほうも悪くないと思っている。
これを機会に脚光を浴びるかと思い、この小説を探したが、古本はおろか市販本さえない。
結局ネット注文してゲット! 少々手痛い出費となった。
この勝海舟という人。
とにかく粋で鯔背な江戸っ子を地でいく人物。
そのキップの良さが、読み進めて分かっていく。
*   *   *
勝驎太郎は、島田虎之介の道場で剣を磨いていた。
師範代をまかされるほどの腕前だ。

驎太郎の父・小吉は、わけあって隠居の身。
見た目は放蕩者。
しかし、レッキとした幕府直参。
腕っぷしも強く、困っている者は見過ごせない。
地元・本所の人たちから頼りにされている人格者だ。
勝家は、岡野家の邸内に住まわしてもらっている。
その岡野家の隠居が妾宅で死ぬ。
息子で当主の孫一郎も遊びで歩いてどこにいるのか分からない。
奥様に泣きつかれ、小吉は葬式を仕切ることに。

その小吉喜んで曰く「鳶が鷹を…」の驎太郎。
島田道場で免許皆伝を受ける。
二人で幕府が主催した砲術演習を観に行く。
垣間見たもの。
それは個ではなく、全体にして個。
兵隊たちの一糸乱れぬ統率した動きの素晴らしさだった。
「勝、これからは蘭学だ」
驎太郎は紆余曲折して、永井青崖という人に付く。
しかし、当時から蘭学(洋学)=蛮夷。
師範代として出稽古に通う屋敷。
道場の門下生からも白い目を向けられる。
島田道場は衰退していく。

それでも、これからは蘭学だ。
驎太郎は一心不乱に勉強。
青崖門下でもあっという間に頭角を現す。
そんなある日、都甲という老人と出会う。
青崖の師匠でもあるこの老人。
勝を気に入り、いつでも庵へ遊びに来いという。

そんな様々な出会いは、勝の伴侶にも。
その女性をひょんなことで助ける。
その喧嘩の相手方は一番組纏持。
喧嘩っ早いが悪ではない。
その丑松とその兄分の岩五郎とも仲良くなる。
助けた君江という女性。
君江(おたみ)と夫婦に。
勝、このとき二十三。

小吉は、仲間の金策に奔走していた。
寒いなか一晩中歩き回る。
なんとか金策は成ったが、小吉は倒れてしまう。
一命は取り留めたが、ひどい中風に。

驎太郎は田町に家を借りる。
都甲の勧めで、塾を開く。
しかし彼自身、学問がしたい。
塾生を教えるのは面倒なように見える。
そんなとき、どこから聞きつけたのか。
杉純道という男が飛び込んでくる。
勝のもと、蘭学を教える講師となる。

小吉はしばらくは良かった。
孫娘をふたりあやしているときだ。
またも倒れて、とうとう帰らぬ人となってしまった。
葬儀は、行列ができるほどだったという。
そのなかには、生き別れの末妹の姿も。

本所は、母のお信と末妹のお順が住み続ける。
驎太郎のまわりは平凡に過ぎているようだ。
しかし、日本はてんてこ舞いだ。
あの黒船が伊豆の浦賀にやってきた。
世の中は騒然としている。
このころ頻繁に、佐久間象山が訪れる。
「勝さん。これからは海軍だ」と、しきりに薦める。
驎太郎も考えていた。
象山が足しげく訪れるのは、どうも妹のお順を気に入ってのことらしい。
歳は離れていたが、ふたりは結婚することになった。

小笠原佐渡守から鉄砲の設計と製造を頼まれる。
これは驎太郎が、学者として世に認められることを指す。
杉やおたみは泣いて喜ぶ。
岩次郎の伝手で、鉄五郎という腕のいい鍛冶屋と組む。
驎太郎は賄賂を受け取らず、その分を国のためにいい鉄砲を作る。

島田虎之介が亡くなった。
脚気だったが、無理な試合を買って出た。
女気のない先生の病床に、お筆という女性が寄り添っていた。

象山とお順が結婚。
お礼に「海舟書屋」という書をもらう。
「“海舟”か。まんざらでもない」

再び来航したペリーのところへ、吉田松陰が密航しようする。
師匠である象山にも嫌疑がかかり、松代へ蟄居させられる。

幕府お目付の大久保忠寛が、驎太郎のところへやってくる。
このとき、大久保は海防係だ。
意見交換などをし、阿部伊勢守にも会い、洋学所へ出仕するよう言われる。
これが膨らんだ形となって、海軍養成所をつくることに。
海軍=操船。
ということで、とうとう長崎へ。
オランダ船での伝習生が選抜される。
勝塾の門下もみんな、もちろん行きたがった。
新婚の杉純道も行きたがった。
結局、門下生で行けたのは、佐藤与之助だけだった。

ひどい船酔いで長崎に辿り着いた。
長崎奉行の永井玄蕃頭が出迎えてくれた。
オランダの教官・ペルスライケン大尉は熱い。
驎太郎が明日からでも教えてほしいと頼むと、感激したのかハグされる。
長崎で驎太郎に“いいひと”ができる。
扇を売る梶屋のむすめで、名をお久というきれいなひとだ。
*   *   *
父・小吉は時代小説の主役を張れるような江戸っ子のカガミ。
その息子驎太郎。ただの俊才だけじゃない。父のいいところを多いに受け継いで、世に出てゆく。
勉強も人一倍以上にやったが、なんといっても江戸っ子特有のその行動力で、長崎での伝習も粋がいい。