2011年9月30日金曜日

子産(上)

ときは春秋中期。
鄭の国は、北に“晋”。
南に“楚”の大国に挟まれ翻弄されていた。

子産は小さなころから天才。
政治の機微を見通せる目を持っている。
父・子国は優秀な将軍だ。
宰相の子駟に従って采配をふるっていた。
子駟は優秀だった。
しかし、暗君である禧公を暗殺。
そのころから、独裁的になり政治もまずい。

子産は父が心配だ。
「子駟に引退を勧めるべきです」
孝道を曲げて父に意見する。
叱り飛ばす子国。
しかし、子産の意見も尤もだった。
父は冷静に理解していたのだった。
*  *  *
上巻は父・子国が主役。
父と息子の、着かず離れずの関係がとてもいい感じだ。
それにしても、この春秋戦国という時代。
政治の均衡を考えての戦争。
暗殺して亡命。
亡命して復讐。
自分には悪循環に見える。
秦の統一は、まだまだ先の話。

2011年9月19日月曜日

破軍の星

とうとう、北方謙三に着手。
水滸伝サーガに挑む前に、小手調べとして本書を読んでみる。

北畠顕家は、私本太平記を読んで気になっていた人物。
東北から颯爽と上洛し、足利勢を蹴散らした。
そんな若きヒーローはどんな人物だったのか。
*   *   *
時は鎌倉幕府が倒れ、建武の新政がはじまっていた。
そんななか、京から陸奥へ整然と進む軍隊がある。
それを束ねるのは弱冠十六歳、陸奥守 北畠顕家。
そんな、顕家を熱く見守る人びとがいた。
安家一族だ。
その嫡男、秀通とおじの正通。
半ば破門という形で、顕家の旗下に入る。
その行動には、一族の想いが隠されていた。

建武の新政に、武士たちの不満が爆発。
武士たちの棟梁として足利尊氏との声が。
しかし、それは計算しつくされていた。
そんなどさくさのなか、大塔宮が殺される。
憤る顕家。
そんな背景もあり、顕家は上洛を決意。

陸奥を発した数万の軍勢は、駆けに駆ける。
途中、楠木正成と合流。
新田義貞との連合軍で、京を手中にしていた足利勢を追い落とす。
しかし、あと一歩というところで尊氏の首をあげられない。

血筋からして“源氏の棟梁”は新田か足利だ。
しかし新田にその徳はない。
尊氏は茫洋としているが、カリスマ性がある。
天佑も味方していた。
九州に落ちたが、また息を吹き返すだろう。
「足利と手を組むべき」
楠木正成は、帝に奏上するが相手にされず。
足利勢に決死で立ち向かうことになるのだった。

顕家が留守の間に、陸奥は荒れていた。
陸奥へ帰りながら、それをしらみつぶしに転戦する顕家。
途中、正成の弟・正家の援助で、無事、多賀城まで帰還する。
しかし、舌の根も乾かぬうちとはこのこと。
足利尊氏は、九州から上洛の兵を挙げる。

安家一族の長・安家利通。
彼は、秀通の父であり、正道の兄である。
彼は顕家に、一族の夢を託す用意があることを打ち明ける。
顕家に、ふたつの道が示される。

陸奥は反乱が治まらない。
大きくはないが、やはい。
後ろで糸を引くのは、足利一門の斯波家長。
国府を多賀城から霊山に移す。
京は楠木正成が討死。
新田義貞は北陸へ落ち、またもや足利尊氏は京に入る。
後醍醐帝以下は、父・北畠親房と呼応して吉野に。

陸奥には都から綸旨が。
一瞬悩む顕家。
しかし、心はすぐに決していた。
利通との会談で、顕家は心構えを吐露する。

上洛の兵は、新田勢と呼応する形をとりたい。
ゆっくりと南下する顕家たち。
鎌倉での斯波家長との激闘を征す。
しかし、武士たちの不満は武士の棟梁を求めてやまず。
迎え撃つ足利勢は二十万にも。
対する陸奥勢はその十分の一か。
非情な戦いは、顕家を死の淵へ。

気がつけば、二ヵ月が経っていた。
その間に、片腕とたのむ旗下の武将たちは散っていた。

奇跡的に助かる顕家。
この命で何を成すのか。
顕家のとった行動は、奇しくも楠木正成と同じだった。
*   *   *
弱冠十六で陸奥守となった顕家。その凛とした姿が、新しい国を目指したらどうなっていただろうか。…なんてのは、想像の域を出ないけれど、彼に魅かれて集まった男たちの気持ちは、少しだけど何となく分かるような気がする。
血統が今以上にモノを言う時代。なんでそこまで奏上が受け入れられないのか自分には理解できないが、悲しい国の体制はもしかすると、今も続いているのかもしれない。

2011年9月7日水曜日

神様のカルテ

電子書籍で読む機会を得た。
松本が舞台のお話。
今、映画が上映中だ。
*   *   *
場末の総合病院の現状。
美しい信州の情景とは裏腹だ。
それでも患者と向き合う一止。
そんななか大学病院から誘いが…。
*   *   *
作中にも説明はあるけど、明治に書かれたような文章だ。
なんか、現代ものではないような錯覚におちいる。
だから逆に、読者に受け入れられたのかも。
地域医療の現状を描いた作品は多い。
信州は実際、南木佳士氏や鎌田實氏のような方が活躍している。
この著者も、その末席に座っていると言ってもいいのかも。
改めて、信州は地域医療では、それでも恵まれていることを感じた。

あと、夏目漱石の「草枕」はともかく、島崎藤村の「夜明け前」は読んでみようかなと思った。

2011年9月1日木曜日

勝海舟(六)明治新政

参謀の海江田と大村の仲が悪い。
やはり付け焼き刃の薩長。
勝の予想通り、海江田は辞表を出す。
大村は大手を振って彰義隊を討伐。
勝は大村の“武力過多”の考えに警鐘を鳴らす。

そんななか、益満休之介がこの戦いで命を落とす。
流弾に当たり、立ったままの壮絶な死。
これには、さすがの勝も愕然とならずにはいられなかった。

徳川と薩長の調整役として、駆まわる勝。
そんななか、榎本が率いる艦隊が房総沖へ。
房総から北へ。
途中、あの咸臨丸がはぐれ清水へ。
それを見つけた官軍は、その乗組に凄惨な仕打ち。
それを弔ったのは、あの清水の次郎長だった。

徳川家は駿府に移封。
徳川直参は帰農・帰商か、無碌で後を追うか。
勝も駿府へ。
駿府は混沌としている。
そんななかでも、未来を見据える人びと。
藩校や兵学校を沼津に建てる。

新政府に呼び出され、東京に。
函館の調整役にかり出される。
勝は、もうほとほといやになった。
「暇をいただきやんす」

松本良順が生きていた。
笑顔だが目に熱いものがたまっていた。
河井継之助を只見村で看取ったという。
これから必要な、おしい人が死んでゆく…と。
*  *  *
いや〜、長かった。読むのに半年以上かかってしまった。
このあとも勝さんは、いろいろと活躍するけれど、小説は勝が「何もかもいやんなった」ように、このへんで終わっている。
最後、阿部邦之介に熱く語る経済の話は、今にも通じる話だ。

でも、オイラにはちと難しい話だったかなぁ。
登場人物もなかなか追いきれず。
そんななか、吉岡艮太夫さんが、バックストーリーの主役のように出てきたのが印象的だった。

勝さんは、あくまで幕府側にたって、ニッポンの未来を考え続けた。
初志貫徹。
その証拠に、徳川慶喜の子を自分の養子に迎え、勝家を継がせている。