2011年10月19日水曜日

小太郎の左腕

林半右衛門は苦い顔をした。
盟主の甥・図書の用兵がまずい。
敵は兎唇の勇者・花房喜兵衛だ。
案の定、戸沢利高を盟主とする味方は敗れる。
重傷を負った半右衛門。
山中で猟師・要蔵の孫・小太郎に助けられる。
要蔵はある理由から小太郎を人から遠ざけていた。
半右衛門は小太郎に、助けられた礼がしたい。
「鉄砲試合に出たい」
それは祖父に固く禁じられていたことだった。
半右衛門は小太郎と約束をする。

数ヶ月後、今年米の穫高は芳しくない。
しかし、豊作を祝うための鉄砲試合は催される。
そこに現れた小太郎は神業を披露する。

戸沢家が寄る翠山城。
児玉家を盟主とする敵に囲まれる。
籠城は長きにわたった。
兵たちは人を食うまでになっていた。
半右衛門は、嘘をついて小太郎をつれだす。
小太郎の神業で、戸沢方は辛くも勝利を収める。
しかし、半右衛門は自分のついた嘘に苦しむ…。
*   *   *
戦国の“漢”だって、ただの人間だ。
しかし、その当時の“魂”というものは、今の時代のそれとは違う。

最後に、小太郎と半右衛門はまったく違う“生き方”の選択をする。
それは“猛々しさ”と“優しさ”の違いでもある。
“手に入れた者”と“失った者”の違いでもあるのだろう。

それにしても、著者の筆圧は見事だ。
「のぼうの城」でもそうだったが、活写がうまい。
映像が見えるようだ。
それに“漢”の描き方も、サッパリとして心地いい。
同年代として、これからも応援してます。

2011年10月17日月曜日

子産(下)

果たして、子国は引退を覚悟し、子駟に意見する。
そこへ反乱の徒が。
子国は勇敢に立ち向かうが、倒される。

首謀者は、以前から子駟に反感を抱いていた。
しかし、そこには黒幕がいた。
七穆の末席にいた子孔だ。

子産は宮廷の変を知ると、素早く行動する。
まず第一に父よりも君主である簡公を助けた。
これにより、子孔の思惑は大きくはずれる。

子産は若干だが、執政の臣の仲間入りをする。
絶妙なバランスで鄭の内外政を取り仕切っていく。
いつしか時代の主権は、君主から大臣たちへ。
そして、とうとう晋と楚の和平が成る。

子産は“礼”というものを確立する。
*   *   *
子産は後進を育てることはできなかった。
それは子産を尊敬した孔子に言えること。
それだけ“礼”といものを伝えるのは、難しいということか…。

子産はすごい人。
だが、反対を押し切って彼を登用した子皮はもっとすごい人だった。
素晴らしいリーダー。
それは適材適所に人材を登用し、その人に絶対的な信用を置ける人。
…と孔子が言ったらしい。

紀元前に“礼”というものが確立されていた。
しかし、それを守り、あるいは実行することが、いかに難しいことか…。