水滸伝サーガに挑む前に、小手調べとして本書を読んでみる。
北畠顕家は、私本太平記を読んで気になっていた人物。
東北から颯爽と上洛し、足利勢を蹴散らした。
そんな若きヒーローはどんな人物だったのか。
* * *
時は鎌倉幕府が倒れ、建武の新政がはじまっていた。そんななか、京から陸奥へ整然と進む軍隊がある。
それを束ねるのは弱冠十六歳、陸奥守 北畠顕家。
そんな、顕家を熱く見守る人びとがいた。
安家一族だ。
その嫡男、秀通とおじの正通。
半ば破門という形で、顕家の旗下に入る。
その行動には、一族の想いが隠されていた。
建武の新政に、武士たちの不満が爆発。
武士たちの棟梁として足利尊氏との声が。
しかし、それは計算しつくされていた。
そんなどさくさのなか、大塔宮が殺される。
憤る顕家。
そんな背景もあり、顕家は上洛を決意。
陸奥を発した数万の軍勢は、駆けに駆ける。
途中、楠木正成と合流。
新田義貞との連合軍で、京を手中にしていた足利勢を追い落とす。
しかし、あと一歩というところで尊氏の首をあげられない。
血筋からして“源氏の棟梁”は新田か足利だ。
しかし新田にその徳はない。
尊氏は茫洋としているが、カリスマ性がある。
天佑も味方していた。
九州に落ちたが、また息を吹き返すだろう。
「足利と手を組むべき」
楠木正成は、帝に奏上するが相手にされず。
足利勢に決死で立ち向かうことになるのだった。
顕家が留守の間に、陸奥は荒れていた。
陸奥へ帰りながら、それをしらみつぶしに転戦する顕家。
途中、正成の弟・正家の援助で、無事、多賀城まで帰還する。
しかし、舌の根も乾かぬうちとはこのこと。
足利尊氏は、九州から上洛の兵を挙げる。
安家一族の長・安家利通。
彼は、秀通の父であり、正道の兄である。
彼は顕家に、一族の夢を託す用意があることを打ち明ける。
顕家に、ふたつの道が示される。
陸奥は反乱が治まらない。
大きくはないが、やはい。
後ろで糸を引くのは、足利一門の斯波家長。
国府を多賀城から霊山に移す。
京は楠木正成が討死。
新田義貞は北陸へ落ち、またもや足利尊氏は京に入る。
後醍醐帝以下は、父・北畠親房と呼応して吉野に。
陸奥には都から綸旨が。
一瞬悩む顕家。
しかし、心はすぐに決していた。
利通との会談で、顕家は心構えを吐露する。
上洛の兵は、新田勢と呼応する形をとりたい。
ゆっくりと南下する顕家たち。
鎌倉での斯波家長との激闘を征す。
しかし、武士たちの不満は武士の棟梁を求めてやまず。
迎え撃つ足利勢は二十万にも。
対する陸奥勢はその十分の一か。
非情な戦いは、顕家を死の淵へ。
気がつけば、二ヵ月が経っていた。
その間に、片腕とたのむ旗下の武将たちは散っていた。
奇跡的に助かる顕家。
この命で何を成すのか。
顕家のとった行動は、奇しくも楠木正成と同じだった。
* * *
弱冠十六で陸奥守となった顕家。その凛とした姿が、新しい国を目指したらどうなっていただろうか。…なんてのは、想像の域を出ないけれど、彼に魅かれて集まった男たちの気持ちは、少しだけど何となく分かるような気がする。血統が今以上にモノを言う時代。なんでそこまで奏上が受け入れられないのか自分には理解できないが、悲しい国の体制はもしかすると、今も続いているのかもしれない。
