勝海舟が演じていたのは、あの“龍馬オタク”の武田鉄矢さん。
「新選組!」のときの、野田秀樹さんのほうも悪くないと思っている。
これを機会に脚光を浴びるかと思い、この小説を探したが、古本はおろか市販本さえない。
結局ネット注文してゲット! 少々手痛い出費となった。
この勝海舟という人。
とにかく粋で鯔背な江戸っ子を地でいく人物。
そのキップの良さが、読み進めて分かっていく。
* * *
勝驎太郎は、島田虎之介の道場で剣を磨いていた。師範代をまかされるほどの腕前だ。
驎太郎の父・小吉は、わけあって隠居の身。
見た目は放蕩者。
しかし、レッキとした幕府直参。
腕っぷしも強く、困っている者は見過ごせない。
地元・本所の人たちから頼りにされている人格者だ。
勝家は、岡野家の邸内に住まわしてもらっている。
その岡野家の隠居が妾宅で死ぬ。
息子で当主の孫一郎も遊びで歩いてどこにいるのか分からない。
奥様に泣きつかれ、小吉は葬式を仕切ることに。
その小吉喜んで曰く「鳶が鷹を…」の驎太郎。
島田道場で免許皆伝を受ける。
二人で幕府が主催した砲術演習を観に行く。
垣間見たもの。
それは個ではなく、全体にして個。
兵隊たちの一糸乱れぬ統率した動きの素晴らしさだった。
「勝、これからは蘭学だ」
驎太郎は紆余曲折して、永井青崖という人に付く。
しかし、当時から蘭学(洋学)=蛮夷。
師範代として出稽古に通う屋敷。
道場の門下生からも白い目を向けられる。
島田道場は衰退していく。
それでも、これからは蘭学だ。
驎太郎は一心不乱に勉強。
青崖門下でもあっという間に頭角を現す。
そんなある日、都甲という老人と出会う。
青崖の師匠でもあるこの老人。
勝を気に入り、いつでも庵へ遊びに来いという。
そんな様々な出会いは、勝の伴侶にも。
その女性をひょんなことで助ける。
その喧嘩の相手方は一番組纏持。
喧嘩っ早いが悪ではない。
その丑松とその兄分の岩五郎とも仲良くなる。
助けた君江という女性。
君江(おたみ)と夫婦に。
勝、このとき二十三。
小吉は、仲間の金策に奔走していた。
寒いなか一晩中歩き回る。
なんとか金策は成ったが、小吉は倒れてしまう。
一命は取り留めたが、ひどい中風に。
驎太郎は田町に家を借りる。
都甲の勧めで、塾を開く。
しかし彼自身、学問がしたい。
塾生を教えるのは面倒なように見える。
そんなとき、どこから聞きつけたのか。
杉純道という男が飛び込んでくる。
勝のもと、蘭学を教える講師となる。
小吉はしばらくは良かった。
孫娘をふたりあやしているときだ。
またも倒れて、とうとう帰らぬ人となってしまった。
葬儀は、行列ができるほどだったという。
そのなかには、生き別れの末妹の姿も。
本所は、母のお信と末妹のお順が住み続ける。
驎太郎のまわりは平凡に過ぎているようだ。
しかし、日本はてんてこ舞いだ。
あの黒船が伊豆の浦賀にやってきた。
世の中は騒然としている。
このころ頻繁に、佐久間象山が訪れる。
「勝さん。これからは海軍だ」と、しきりに薦める。
驎太郎も考えていた。
象山が足しげく訪れるのは、どうも妹のお順を気に入ってのことらしい。
歳は離れていたが、ふたりは結婚することになった。
小笠原佐渡守から鉄砲の設計と製造を頼まれる。
これは驎太郎が、学者として世に認められることを指す。
杉やおたみは泣いて喜ぶ。
岩次郎の伝手で、鉄五郎という腕のいい鍛冶屋と組む。
驎太郎は賄賂を受け取らず、その分を国のためにいい鉄砲を作る。
島田虎之介が亡くなった。
脚気だったが、無理な試合を買って出た。
女気のない先生の病床に、お筆という女性が寄り添っていた。
象山とお順が結婚。
お礼に「海舟書屋」という書をもらう。
「“海舟”か。まんざらでもない」
再び来航したペリーのところへ、吉田松陰が密航しようする。
師匠である象山にも嫌疑がかかり、松代へ蟄居させられる。
幕府お目付の大久保忠寛が、驎太郎のところへやってくる。
このとき、大久保は海防係だ。
意見交換などをし、阿部伊勢守にも会い、洋学所へ出仕するよう言われる。
これが膨らんだ形となって、海軍養成所をつくることに。
海軍=操船。
ということで、とうとう長崎へ。
オランダ船での伝習生が選抜される。
勝塾の門下もみんな、もちろん行きたがった。
新婚の杉純道も行きたがった。
結局、門下生で行けたのは、佐藤与之助だけだった。
ひどい船酔いで長崎に辿り着いた。
長崎奉行の永井玄蕃頭が出迎えてくれた。
オランダの教官・ペルスライケン大尉は熱い。
驎太郎が明日からでも教えてほしいと頼むと、感激したのかハグされる。
長崎で驎太郎に“いいひと”ができる。
扇を売る梶屋のむすめで、名をお久というきれいなひとだ。
* * *
父・小吉は時代小説の主役を張れるような江戸っ子のカガミ。その息子驎太郎。ただの俊才だけじゃない。父のいいところを多いに受け継いで、世に出てゆく。
勉強も人一倍以上にやったが、なんといっても江戸っ子特有のその行動力で、長崎での伝習も粋がいい。
