武蔵はケガをしている。釘を踏み抜いて。梅軒を訪ねると折り悪く留守で、伊勢神宮の禰宜・荒木田氏の仕事をしているという。そこには、偶然にもお通と城太郎が身を寄せている。
そうとは露とも知らない武蔵。梅軒は荒木田氏のもとにはおらず、足のけがはいよいよひどくなる一方。旅籠で悶々とする武蔵は、けがによっての自身の未熟さをののしり、宿の外に見える絶壁の鷲ヶ岳を石舟斎と見立てる。けがをした足で山に挑む武蔵。石舟斎を越えたという気持ちがそうさせるのだった。
京都には当面の敵・吉岡清十郎がいて、果し状も送ってある。返答の日時と場所も記したので遅参するわけにはいかない。その約束は又八への約束ともリンクしている。
京都へ向かう武蔵は、偶然に梅軒と出会う。梅軒の家に泊まり、鎖鎌の極意や型などを教えてもらう武蔵。話は生い立ち話。話に花が咲く。しかし、なんと梅軒は、関ヶ原近くで武蔵と又八とで返り討ちにした野武士の頭領の弟・辻風黄平だった。寝込みを襲われそうになった武蔵だが、間一髪で身を隠し、逆に寝首をかけるぞという脅し工作をして梅軒宅を去る。これも一種の兵法。
武蔵と吉岡清十郎の果たし合いは、あっけなく決着がついてしまう。
高札で約された場所で果たされず、吉岡門下や佐々木小次郎にも立ち会われず、いろいろな人びとの思惑が交錯する外で、吉岡清十郎の付き人だけが、立ち合いの承認ということになってしまったが…。
その言葉によれば木刀での勝負で、清十郎は肩を打ち砕かれた。これによって彼は、片腕をなくすこととなってしまう。
武蔵は勝ったものの、心から喜べない。吉岡清十郎は弱かった。そんな帰り道、枯れ野のなかで不思議な老母と息子に出会い、何とはなく魅かれ、時をともにする。息子はあの本阿弥光悦。武蔵はここで剣道と茶道の不思議な共通点を発見したりする。
又八はとうとう本物小次郎と鉢合わせ、化けの皮をはがされ、結局頼るのは母のお杉婆。母を慕って、清水三年坂へと向かう。
吉岡では、弟の伝七郎が兄の復讐のため、遊蕩先から舞い戻り、躍起になって武蔵を探していた。
そんな武蔵を、追いかけるお通や又八やお杉婆。お通はせっかくのチャンスも、嫉妬に焦がれて逃してしまう。婆はそんなお通をうまく言いくるめて、何を企むのか!?
* * *
これまで読んでみると、武蔵は確かに強いのだけれど、本当に自分より強い者には実際にぶつかっていない気がする。宗彭沢庵、宝蔵院日観、柳生石舟斎、そして本阿弥光悦のような人たちと交わるにつけ、自分の未熟さを感じずにいられない。